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2005/05/26

box 週刊文春の『MASTERキートン』絶版記事を考えてみる はてなブックマークに追加 MM/memo投稿 del.icio.us entry

MASTERキートン (1) 5/19に発売された週刊文春に「超人気マンガ「マスターキートン」突如消えた不可解な理由」という記事が載っていると聞いて、読んでみたんですが、なんか事情が複雑なようで。いろいろな情報を調べてみた感想としては、週刊文春の記事は、浦沢・長崎サイドの情報に偏っているなあというものでした。
 まず週刊文春に掲載された記事の内容はこちらに詳しいです。
人気マンガ「MASTERキートン」が絶版に至った理由。 Narinari.com
 砂上の賃貸のにっくさんが、この週刊文春の記事を受けて、ネットで噂されている様々な情報をまとめていました。
週刊文春のMASTERキートン記事は果たして真実か 〜浦沢直樹・長崎尚志・雁屋哲をめぐる様々な噂 | 砂上の賃貸

 いろいろな名前が出るので最初に整理しますが、菅伸吉氏は「きむらはじめ」「ラデック鯨井」「勝鹿北星」を、長崎尚志氏は「東周斎雅楽」「江戸川啓視」というペンネームを使っています。この辺りは、アニメで英会話/台詞逆輸入内にある記事で整理されています。
勝鹿 北星ときむら はじめと長崎 尚志の謎

「ダメ!」と言われてメガヒット―名作マンガの知られざる制作現場 なぜ、雁屋哲氏が、この『MASTERキートン』絶版話に関わってくるかというと、雁屋哲氏と菅伸吉氏は、電通の同僚で、どちらも『ゴルゴ13』の原作をやっていたという関係があります。
 「ダメ!」と言われてメガヒット―名作マンガの知られざる制作現場(東邦出版)を書いた宇都宮滋一氏のブログでは、書籍に掲載されなかった『ゴルゴ13』に関するエピソードが紹介されています。
「ダメ!」と言われてメガヒット:ゴルゴ13(第6回)
 『ゴルゴ13』ではきむらはじめ名義で活動しており、その話作りには定評があったようです。なので、国際事情を盛り込んだ『MASTERキートン』のストーリー作りができたのも納得できます。

 にっくさんも触れられてますが、『噂の眞相』2000年2月号の記事は今回の件を考える際にキーになりそうです。ネット上の情報としては、ダ−松の明日はこっちだ!の1月10日や、勝鹿 北星さんは長崎 尚志さん?に詳しいのですが、内容は長崎尚志氏がスピリッツ編集長から更迭されたのは、『MASTERキートン』担当者時代に、架空の原作者(勝鹿北星ですね)を作り上げ、原作料を自分の妻の口座に振り込んでいたというもの。そして注目なのが、この情報を出したのが雁屋哲氏だというのです。長崎氏がスピリッツの編集長を担当し、その後フリーとなり、「東周斎雅楽」「江戸川啓視」といったペンネームや本名を使って、原作やプロデュース業をしているのは事実ですけど、横領の話は確認しようがありません。これに関しては、『噂の眞相』の記事掲載後、裁判になったなどの話はなかったと記憶してます。記事に書かれた側としては、そこまで問題視するほどの記事ではなかったということなんでしょうか。
 この記事は、菅伸吉氏の存在に関して、かなり不明瞭らしく、その辺で生まれた誤解が入っていると思いました。ただ、いずれにせよ、長崎氏がスピリッツの編集長時代に、雁屋哲氏と何かあっても不思議はなさそうです。
コミックパーク/夏目房之介エッセイ『マンガの発見』 浦沢直樹試論2
 また、夏目房之介氏によるコラムでは、長崎氏が『ゴルゴ13』の担当であったという話が出ています。その辺りでも、何か因縁があるのかも。

 次に、この勝鹿北星氏は誰なのか?という話が、メディア上でどう語られてきたか、というのを調べてみると、なかなか興味深いのです。
 休刊したマルコポーロの1993年5月号の「進め!マンガ青年!」という漫画特集で、「『MASTERキートン』原作者の謎を追う」という記事があったんですが、この記事では担当編集者や元傭兵で軍事アドバイザーの毛利元貞氏が勝鹿北星の正体を匂わせてました。当時のマルコポーロは部屋に埋もれていて発掘できないかなあと思ったら、現物を発見できたので現物を紹介しておきます。
マルコポーロ1993年5月号表紙マルコポーロ記事「『MASTERキートン』原作者の謎を追う」

※記事のほうはクリックすると拡大画像になります
 担当編集者というのが、てっきり長崎氏だと思っていたら、違っていて、久保田滋夫という方でした。『MASTERキートン』は途中で担当が変わったという話は聞いていたんですが、ここで確認が取れました。

マルコポーロ
 ついでに、手元にあるマルコポーロを撮影。マルコポーロは面白い特集が多かったので、よく買ってました。マルコポーロに限らないんですけど、90年代前半って雑誌が面白かった時期だなあという印象がありますね。

 そして、ビックコミックオリジナルの1994年6月20日号では、勝鹿北星として、菅伸吉氏がきむらはじめ名義で登場するインタビューが掲載されます。
KEATON & KEATON ビッグコミックオリジナル1994年6月20日号(MASTERキートン連載終了直後)インタビュー記事より

「ある集まりのとき、別の出版社の人が「実はキートンの原作者は6〜7人の専門家集団で、それを編集者がまとめているんですよ」って僕に言うんです。黙ってたけど…愉快でしたね(笑)」
という発言があったそうで。
 ここまでは、菅伸吉氏が原作者の勝鹿北星であるという話で進んできたわけですが、2000年の『噂の眞相』の記事で先のような話が出て、そして今回の週刊文春の記事では、菅伸吉氏はほとんど原作を書いておらず、浦沢直樹氏と担当編集の長崎尚志氏で話を作っていたという情報が、浦沢氏と長崎氏サイドから出てきてます。その傍証として、原作者のクレジット表記を小さくするのと印税比率についての話し合いが菅伸吉氏と浦沢直樹氏の間で行われ、両者の間では納得済みだったとされています。

 なお、勝鹿 北星ときむら はじめと長崎 尚志の謎では、浦沢直樹氏の元アシスタントで現在漫画評論家の伊藤剛氏から聞いたというこんなエピソードが紹介されています。
勝鹿 北星さんはラデック・鯨井 = きむら はじめさん!

MASTER キートン」連載当時、浦沢 直樹さんの仕事場には電話兼 FAX しかなく、よく明け方に 「きむらです〜。今から原作を送りますので、FAX に切替えて下さい〜」と 死にそうな声で電話が掛かって来た(笑)
 菅伸吉氏が原作をほとんど書いていないというのなら、その辺りの情報も出てきそうなものですが。コミックパークの夏目房之介氏のコラムの最後に、伊藤剛氏による浦沢直樹論に刺激を受けたと書かれていたので、いずれ浦沢論が公表されるのを期待しておきます。

 週刊文春の記事が本当なら、なぜ掲載誌であったビッグコミックオリジナルで、わざわざ原作者インタビューなる記事が掲載されたのか? そして、原作者とされる菅伸吉氏が亡くなった後に、浦沢氏と長崎氏サイドが、菅伸吉氏は原作をほとんど書いてなかったというのはなぜなのか?
 また、AERAの3/30号で浦沢直樹氏が『パイナップルARMY』でも、工藤かずや氏は原作をほとんど書いておらず、自分と担当の長崎氏で話を作っていたと語っているという情報を見かけました。これは、詳しく触れているところなどはなかったのですが。
 今でこそ漫画のストーリーを編集者が作るという話は、講談社の少年マガジンなどを中心に有名になってますが、「原作」に原作者と編集者がどう関わっているのか?というのは曖昧な部分があり、そこに原作料や印税のような金銭面をどう処理していたか?というグレーゾーンがあったのではないかと推測します。社員として関わっても、お金でのメリットはないから、少年マガジンの樹林氏のように、有能な編集者たちは次々と独立したんだとは思いますけど。

 今回の件は、菅伸吉氏が『MASTERキートン』の原作をほとんど書いてない(=浦沢直樹氏が原作に頼らなくても素晴らしい話を作る人間というイメージを持たせたい?)という情報を広めようとしている浦沢・長崎氏サイドに対して、雁屋哲氏がこれは菅伸吉氏の功績を貶めようとしているのだと思い、また原作者の軽視であると見て、可能な限りの抵抗をしているのではないかと推測。
 ただ、原作が出回らなくなり、読まれなくなってしまっては、功績も何もないので、週刊文春の記事が事実で、原作者のクレジット表記を小さくするのを菅伸吉氏が生前了承していたというのなら、勝鹿北星氏のクレジットをなくそうとしている訳ではないですし、雁屋哲氏にほどほどのところで折れてもらいたいところです。ともあれ、雁屋哲氏側からのコメントがあれば、もう少し事情はわかりそうなものですけど。

 なお、雁屋哲氏が左翼傾向の思想の持ち主だから、週刊文春はコメントをもらわなかったのではないか?という邪推もあるんですが、浦沢直樹氏は辻元清美氏の裁判を支える会の会員ですし、その辺はあまり関係ないと思われます。
辻元清美さんの裁判を支える会

 余談ですが、『MASTERキートン』のネーミングの由来として、「あきれたぼういず」の一人「益田喜頓(益田キートン)」の本名から取ったというのを以前紹介しましたが(ARTIFACT ―人工事実― | 勝鹿北星氏逝去/『MASTERキートン』のネーミングの由来)、「きむらはじめ」は実在する少年の名前から取ったとのことがこちらで書かれてました。
「ダメ!」と言われてメガヒット:ゴルゴ13(第6回)

スラッシュドット ジャパン | 『MASTERキートン』,他人の横槍で絶版中
 スラッシュドットのコメントで知ったんですが、下記のページが面白かったので紹介。
中野店 岩井の本棚 「マンガにでてくる食べ物」 第28回 美食界のケンカ屋・山岡士郎その戦歴
中野店 岩井の本棚 「マンガにでてくる食べ物」 第29回 巨魁・海原雄山
中野店 岩井の本棚 「マンガにでてくる食べ物」 第30回 1985年度版これが雄山だ大百科
 『美味しんぼ』3巻までの山岡士郎と山岡士郎のケンカっぱやさを愉快に紹介しているページなんですが、菅伸吉氏が山岡士郎のモデルだというのなら、このぐらいケンカっぱやかったんでしょうかね。

特定非営利活動法人 美味しんぼニッポン 公式ホームページ
 あと、こんなのがあったのも知りました。

 以下、今回参考にさせていただいたブログ。
勝鹿北星が……。(マンガ評/マンガの周辺) / mm(ミリメートル)
漫棚通信ブログ版: 菅伸吉の横顔
fxxk.exblog.jp 【訃報】「MASTERキートン」原作者・勝鹿北星氏

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Comments
投稿者 : 台詞逆輸入 投稿日 : 2005/05/30 20:21

【アニメで英会話/台詞逆輸入】【勝鹿 北星ときむら はじめと長崎 尚志の謎】の台詞逆輸入と申します。

アクセス解析していて、リンクして頂いていることに気が付きました。
ありがとうございます。

遅ればせながら文春の検証を加えました。
http://serifugyakuyunyuu.com/lines/keaton/katsu/

ご笑覧頂ければ幸いです。

投稿者 : 加野瀬 投稿日 : 2005/05/30 20:50

国会図書館まで行って取材されたんですね。素晴らしい!
雁屋哲氏は『ゴルゴ13』の原作クレジットにないんですね。それは間違ってないと思っていたので特にチェックしてませんでした。調べてみます。

TrackBack −この記事に言及したサイト−
Weblog: 昨日の風はどんなのだっけ? Tracked: 2005/05/26 14:28
Excerpt: >> 原作者とされる菅伸吉氏が亡くなった後に、浦沢氏と長崎氏サイドが、菅伸吉氏は原作をほとんど書いてなかったというのはなぜなのか? ARTIFACT ―人工事実―) -関連:勝鹿北星ときむらはじめと長崎尚志の謎 -過去記事:[マンガ] 人気マンガ「MASTERキートン」が...
Weblog: Talking in the 5th-Dimension Tracked: 2005/05/29 21:27
Excerpt: 時代を取り込み、また時代を先取りするようなストーリーが秀逸だった浦沢直樹・MA...
Weblog: ロックな幸せ☆ Tracked: 2005/05/30 16:07
Excerpt: 描きたい漫画の構想がいっぱいある。 こないだの『R25』でファーストガンダムのシャアの全身画像があったので、これを見本にして絵を描きたい、とか。 「3倍」はシャアのキーワードだと聞いたので、通常の3倍速で動く、シャアのGIFアニメを作りたい、とか。 ガックンの代...
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Weblog: オレオレメモφ(゜д゜*)<[マンガとかカープとか、ほんの少しの日常とか。] Tracked: 2005/06/13 01:36
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