オタク定点観測 1999/12
[第18回]−距離感の喪失

 以前、当コラムで、オタクのネットワークの話を書いたが、今回は電子ネットワーク上でのコミュニケーションに絞って、解説をしよう。今回、筆者のネット行動範囲から、絵描き系サイトを中心とした話になるのをご了承していただきたい。
●電子メール
 基本手段である。WEBサイトを持っている(情報発信している)人がメールを出したのなら、相手の情報がいろいろわかるため、返事は出しやすい。しかし、情報発信してない人がメールを出す場合、出す方は相手のことをよく知っているけど、返事をする方にとって相手の情報はそのメールしかない。なので、情報の少ないメールには、なかなか返事を書きにくいのだ。これは掲示板でも同様。
●IRC  リアルタイム系の究極がこれである。「Internet Relay Chat」の略で、IRCサーバーにIRCクライアントで接続し、IRCサーバに接続した者同士で会話ができる。パソコン通信でよくいわれる「チャット」と同じ感覚で使え、普通の会話機能以外に、特定の相手との会話ができる電報機能やファイル転送(DCCと呼ばれる)もあり、その便利さになれると、WEBチャットには戻れない。テレホーダイタイムになると接続しにくくなるIRCサーバーもあるぐらいだ。IRCには「チャンネル」という部屋のようなものがあり、好きなチャンネルに入ることができる。チャンネルはWEBサイトなどで告知されており、「#PUREGIRL:*.jp」のような文字列はIRCのチャンネル名なのである。チャンネルには、公開と非公開があり、公開チャンネルは大規模化しやすい。多いところでは30人ぐらいになるところもある。ただ、大規模化していくとどうしても、グループができてしまい、最終的には分裂していくことになる。
●掲示板
 パソコン通信からの流れでWWWにすっかり定着した掲示板。絵描きのサイトに行くと大抵掲示板があって、賑わっていることが多い。掲示板というのは面白いもので、メールは出しにくいと思っていても、掲示板上で管理人がいろいろな人にレスをしているのを見ると、書き込みの敷居が低くなる。管理人も、最初は気をよくして、全部の書き込みに対してレスをしていく。しかし、だんだん管理人とは関係のない話題で盛り上がったりしてきたりすると、掲示板の運営に疲れてきてしまい、最終的には閉鎖することになる。有名人になればなるほど、その傾向は強い。
 また、大して絵が上手いとも思えないサイトでも、掲示板では絶賛の嵐だったりすることがあったりする。こういうサイトは、本人の日記などの言動もユニークな事が多いので、、確実に趣味人の観察対象にされやすい。その局地的人気ぶりは、カリスマ店員やスーパー女子高生を連想させる。ネットならばネットアイドル。となるとカリスマネットペインターか?
 そんな愉快な掲示板だが、そこによく出現する困ったちゃんの症例を報告。
[日記君] 文字通り、掲示板に日記を書く人。自分の行動+人に伝えたい意見がある書き込みならいいのだが、行動しか書いてない場合、返事のしようがない。「徹夜明けでヘロヘロです〜」という書き込みは、どういう返事を期待しているんだか……。
[フレンドリー君] 全然面識がないのに十年来の友達かのような態度で書き込む人。「いったい君はいつ自分と友達になったの? 挨拶したらもう友達?」
[趣味押しつけ君] 自分の趣味を管理人に押しつける人。Macの人にWinマシンを勧めたり、その逆だったり。
 ネットで起きるコミュニケーショントラブルを見ていて、総じて感じるのが、「距離感の喪失」だ。実際に人と会った時なら、相手の様子を見て、不快に思っているかどうかわかるから、妙な勘違いはしにくい。しかし、ネットはテキストだけのコミュニケーションなので、相手の心理状態を読めない「ネットワークハイ」という勘違いを生みだしがちだ。そういう事態に陥るのが恐いため、メールを出さない、掲示板に書き込まないという人もいる。でも、せっかくのネットで人の輪を広げないのは勿体なさすぎる。興味のある人にはどんどんコンタクトを取ろう。ネットだからといって特殊な事はない。普通の対人関係と同じである。コンタクトを取った人にとって、あなたは「初対面」だという事さえ忘れなければいいのだ。間違っても唐突に「本当の友達を探しています。ぜひ友達になりましょう」なんてメールは出さないように。

掲載=カラフルPUREGIRL 1999年12月号(ビブロス刊)

■コメント
 掲載時に削ったIRCのことを追加。しかし、これだけネットが普及したのにIRCはいまだにマイナーなアプリケーションですね。慣れれば最強のチャットツールなんですが、やはり導入のハードルが高いようで。
 自分の場合、サイトで話題にしていたマイナーな漫画などに関する不躾な質問メールが届いたりしましたが、まあそのぐらいで不愉快になっていてもしょうがないと思ってました。オチはファンロードのペンフレンド募集ページで実際にあったもの。
[Profile]
今回、こんなコラムを書いてますけど、メールでイヤな思いをしたことはほとんどないです。掲示板では何回かバトルといわれるようなものをやりましたけどね……(遠い眼)。WEBを更新してないので、ネット世界ではすっかり死んだ人扱い。
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