オタク定点観測 1999/06
[第12回]−「手描き作家デジタル化防止法案」の設立を提唱!

 世の中、デジタル化ががんがん進んでいて、デジタル万歳人間としては嬉しい限りなのだが、そんな人間でもアナログで残って欲しいと思っているものがある。それは手描きのイラストだ。最近のデジタルイラストは、すっかり手描き(アナログ)っぽくなり、パソコンで描いたというと驚く人も多い。しかし、デジタルを使ったイラストというのは、なんとなくデジタルの匂いがある。雑誌などでイラストがアナログのように見えても、デジタルで描いたものは《痕跡》があるのだ。
 まず、《色の幅》のことが考えられる。アナログであってもデジタルであっても、紙に印刷されば、CMYK(シアン・マゼンダ・イエロー・ブラック)のインクで表現されるので、最終的には表現できる色の幅は同じではある。ただ過程に違いがあるのだ。デジタルの場合、RGB24ビットカラー(1677万色)という人間の目で違いはわからない(だから天然色と呼ばれたりする)色数が使える。しかし、RGBとCMYKというのは考え方の違う色の方式なので、変換する必要性がある。手元にPhotoshopがある方は、Blue255で塗りつぶしたデータをCMYK変換してみて欲しい。変換するとRGBと違い、濁った色になるのだが、CMYKがRGBに比べて、色の幅が狭いことがわかると思う。もちろん、アナログイラストの色もCMYKでは完全に再現できる訳ではないが、アナログのスキャナーでCMYKに色を変換(専門用語で「色分解」という)するため、デジタル的なCMYK変換に比べれば、色の幅が広い。ただ、アナログであっても、DTPで印刷される場合、スキャナで読み込んで、一回デジタルデータに変換されてしまう。そのため、DTPを使った印刷物においては、色の幅の違いはわかりにくいだろう。
 もう一つの理由として考えられるのが、デジタルの場合、アナログに比べて《ノイズ》が少ないこと。Painterのように、手描きの質感を出すため、紙のテクスチャをいれるペイントソフトもあるが、Painterのデフォルトのテクスチャ設定を使えば、当然見た目でわかってしまう。オリジナルのテクスチャを使ったとしても、一部のパターンが全面を埋め尽くしているため、どこを切り取っても同じパターンは存在しない本物の紙とは、印象が違うハズ。それにデジタルだと、アナログのような塗りのムラを再現するのも難しい。アナログの一塗りとPainterの一塗りでは、アナログの方が断然情報量が多い訳だ。
 そんな訳で、いくら手描きに近くなったといっても、デジタルイラストというのはアナログイラストとは別物だと思っていた。だから、アナログで魅力的な絵を描く人には、アナログで続けていって欲しいと思ったのだが、最近、アナログの画材で世界を確立していたイラストレーターがパソコンを導入することが増えてきた。特に大御所の間でそれが目立つ。具体的には、末弥純氏、米田仁士氏、平田弘史氏といったところである。末弥氏はアナログとデジタルを使い分けしているのだが、米田氏はすっかりデジタル派になってしまったようだ。この辺については弊誌の兄弟誌である『カラフル萬福星』のインタビューをぜひ読んで欲しい。4号では平田氏、6号(予定)では米田氏にインタビューしている。これで、山田章博氏、草g琢仁氏までもがCGを導入したら、時代が音を立てて変わった気がするだろう。
 世の中のデジタル化が進んでも、アナログの画材で魅惑的なイラストを描いてくれる作家には、あまりデジタルを導入して欲しくないと思う今日この頃である。

掲載=カラフルPUREGIRL 1999年6月号(ビブロス刊)

■コメント
 2002年現在でも山田章博氏と草g琢仁氏はアナログで描いていて一安心。CG導入初期にくらべれば、「コンピュータで描きましたッ!」と自己主張しているようなイラストはすごく減った気がします。それだけコンピュータが絵を描くツールとして定着したということでしょうか。そういえば、村田蓮爾氏のCG導入は原画展で見るまで気付かなかったです。※これは勘違い。マーカー塗りでした
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春のアニメ新番組で、万人におすすめできるのは『十兵衛ちゃん』でしょうか。「重い生理になった時みたい」というセリフにちょっと感動。男には生理のつらさはわかりません……。そいや、美少女ゲームで生理のことが出てきたら面白そうですね。
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