オタク定点観測 1999/05
[第11回]−一口に「アニメ絵」と呼ばれるけれど?

 《アニメ絵》と聞いて、あなたはどんな絵を思い出す? 筆者が、この単語を意識したのは、ゲーム雑誌であった。ゲームの短いレビュー記事で、「アニメ絵だけど…」のような否定的なニュアンスの使われ方が目立っていたのだ。《アニメ絵》の特徴を挙げると、「眼が大きい」「髪の色がピンクや緑」「髪の毛が寝癖のようにはねている」「デッサンがどうも崩れ気味」といった感じだろうか。
 なぜ、この単語がゲーム雑誌でよく使われたか? 昔のゲームのビジュアルは、ハードの表現力が低かったから、ドットの集合体、《ドット絵》でしかなかった。それが、PCエンジンのCD-ROM2が登場してきた頃から、漫画・アニメ文化の流入があり、ゲームのビジュアルにイラストといえるようなものが出てきた。この流れを、なんとな〜く差別的に呼ぶための単語の一つが《アニメ絵》だった訳だ。
 ただ、実際にこの単語が発生したのは、ゲーム雑誌以前である。時期的には、アニメ版の『うる星やつら』を始点とするかわいい系の女性キャラの描き方が登場してからだろう。この頃から、漫画雑誌において、持ち込み漫画の絵柄を「アニメっぽい」と評することがあった。『サルにもわかる漫画教室』(相原コージ・竹熊健太郎著)でも、『少年サンデー』の漫画の特徴として《アニメ絵》を挙げている。
 しかし、不思議なのは、《アニメ絵》というのが、「デッサン崩れ気味」という定義になっていることだ。本来アニメの絵を描いているアニメーターというのは、大変絵が上手い職種である。しかし、当のアニメーターが描いた《アニメ絵》よりも、アニメーターでない人間が描いた《アニメ絵》の方が、世間に多く露出したため、アニメ絵=デッサン崩れ気味という定義を生み出してしまったのだと思う。
 そこで原点に戻り、アニメーターが描く《アニメ絵》について考えてみたい。これは、先に挙げた《アニメ絵》とは違うモノだ。区別のために、アニメーターが描いた絵は《アニメーター絵》としておこう。
 人間の顔の描き方(デフォルメ)が似ていても、《アニメーター絵》と《漫画絵》というのは、見た目に違いがある。その一番の違いは《線》だろう。漫画は、《線》に特別な意味を持たせている。だから、漫画講座では、《線》に表情を出させ、生きた《線》が描けるように、ペンの訓練をさせる。アニメーターが描いた漫画を読んでいると、なんとなく味気ないのは、《線》が均一気味で表情がないからだ。
 しかし、アニメ(ここではセルアニメ)の場合、均一な《線》で、絵に特徴を出さなければならない(※昔は荒々しい鉛筆線タッチを使うこともあったが)。そのため、アニメーターは、輪郭線をどう抽出するかで勝負することになる。
 これに関して、『シャーマニック・プリンセス』などを担当したアニメーターの西村博之氏が運営しているWWWに面白いコラムがある。絵(線画)に関する講座なのだが、とにかく輪郭線にこだわっている。特に興味深いのは、《シルエット》を重視していることだ。アニメーターはシルエットの形状変化で動きをつけるため、細部のディテールより、全体の流れを重視する。
 《アニメーター絵》というのが、見ただけで何となくわかるのは、この《シルエット》重視のおかげだろう。しっかりした《シルエット》によって、絵のフォルムが明確になり、強いメリハリを持った絵になっているからだ。

掲載=カラフルPUREGIRL 1999年5月号(ビブロス刊)

■コメント
 雑誌移籍の話は倒産前から進んでいたのですが、最終的にビブロスに。雑誌名を変えたほうがいいというのでビブロスの男性雑誌の頭についていた「カラフル」がつきました。
 ここで書いた「アニメーター絵」というのは、いまだにあまり認識されてないようで。『人狼』の作画を「韓国作画」と言ったおバカさんがいたそうですが、行き過ぎた一枚絵至上主義のせいでアニメの作画シーンを閉塞させてしまうのは勘弁して欲しいものです。
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世間は、∀だPS2だと騒がしいですが、SCEIから普通のPSで『オメガブースト』なるすごいロボットゲームが4月に出まっせ! ゲームで本当に板野アクションが再現されてます! 『ガサラキ』も何だかんだいって楽しんでます。
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