オタク定点観測 1998/07
[第4回]−プロとアマチュアの道具が同じになってきた

 さる4月2日に中野でアマチュアCGAコンテストの上映会が行われた。アマチュアCGAコンテストは「アマチュアのCGA(CGアニメーション)作品の発表の場を設け、広く一般にCGAをPRするとともに、アマチュアCGAの質的向上を促進する」ことを目的として、Project Team DoGAという団体が主催している。Project Team DoGAは、アマチュア向けにアニメーション制作システムを提供してきた団体で、当初はX68000上で動く「DoGA」というシステムを提供してきた。Oh!Xなどで活動していたので、X68000ユーザーなら憶えている人も多いだろう。最近では、より初心者向けのシステム「DOGA-L1,L2」をWindows用に開発している。詳細を知りたい方は公式サイトを見ていただきたい。
 このコンテストはDoGAで作った作品を人に見せる場所がないということから、始まった訳だが、時代の変化とともに、DoGAシステムでの応募は減り、市販の3Dソフトによる応募が増えてきた。そこで面白い現象が起きてくる。今までは、アマチュア作品として考えれば出来のいいというレベルの作品が多かったが、次第にビジュアル面でアマチュア作品とは思えない作品が増えてきたのだ。これはなぜか? それは、プロの使うアプリとアマチュアの使うアプリが一部同じになってきたためなのだ。具体的にはNewTek社の3Dソフト「LightWave3D」の台頭である。世の中の3Dソフトは大変高価で、3D STUDIO MAXのように50万近くしたり、Softimage 3Dのように120万円(あくまで最低セット価格)したりするのだが、LightWave3Dは28万円という安さなのだ。LightWave3Dは、『風のクロノア』『ワールドスタジアムEX』『レイジ・レイサー』(以上ナムコ/PS)『フロントミッション・セカンド』(スクウェア/PS)のオープニングの制作などに使われている3Dソフトである。余談だが、ナムコでこれらのオープニングを作った由水氏もDoGAのコンテストに入賞している。
 また、この自主制作CGアニメの流れに、自主制作の手描き(2D)アニメの流れが入ってきたのも興味深い。
 オタク歴史の中で、アマチュアが作った2Dアニメの歴史を紐解くと、やはり80年代のDAICON(=大阪SFコンベンション)のオープニングアニメが源流になるだろう。今ではすっかり有名になった赤井孝美氏、庵野秀明氏、山賀博之氏が作ったのが、8mmのペーパーアニメによるDAICON3のオープニングであった。その後、各人がプロの現場に行き、そこで得られた知識を活かしてて作られたのが、16mmフィルムのセルアニメによるDAICON4のオープニングアニメである。DAICON4のOPアニメの、アマチュアアニメとしてのオーバースペックぶりは、今でも伝説になっているほどだ。
 その後、自主制作2Dアニメの流れの中では、大学のアニ研連の活動が目立っており、一年に一回上映会をしている。手描きのアニメーションの制作には1コマ撮影ができるカメラが必要不可欠。しかし、8mmカメラの製造中止により、フィルムからビデオへの移行を余儀なくされ、パソコンの普及によって、デジタル化が進む事になった。
 それまでは、3D CGアニメを作る人と、2Dアニメを作る人は棲み分けしていたのが、こうして道具が一緒になった結果、先に述べたような3D CGアニメと2Dアニメの融合が始まってきたのだ。また、3D CGアニメでも、制作者側に2Dアニメの洗礼を受けてきた者が多くなり、2Dアニメのセンスに溢れた3D CGアニメも増えてきた。DoGAコンテストで入選した『PROJECT WIVERN』はその最たる例だろう。二人の大学生がLighwWave3Dで作ったこの作品は、宇宙戦闘モノというよくある題材だが、その映像クオリティは見た人を圧倒させる。『PROJECT WIVERN』のオーバースペックぶりは、90年代のDAICONアニメといっても過言ではないだろう。現在、『PROJECT WIVERN』を作った二人はプロとなって活動している。『PROJECT WIVERN』の詳細は青山敏之氏のサイトで確認して欲しい。
 このようにプロとアマチュアの道具に差がないという状態は、静止画CGの世界では更に進んでいる。プロが主に使うのは、PhotoshopとPainterだが、多くのアマチュアもこれらを使っている。プロは自分がすでに既に確立した技法の中に、CGを導入しなければならないため、さまざまな苦労をしているが、アマチュアは、研究する時間が多かったり、最初からCGだったりするので、アマチュアの方にアドバンテージがある。そのため、自然と手描きCGの技術の発展はアマチュアが中心となっていった。
 また、同人誌でも、IllustratorやPageMakerといったDTPソフトの普及によって、装丁や本文デザインのレベルがあがってきた。同人誌の印刷所もデータ入稿に対応し始めており、印画紙出力やフィルム出力をしてくれるようになっている。このような同人誌のDTP化の動きに興味を持つ人も多いだろうし、ノウハウを知りたい人もいるだろうが、技術ノウハウは当コラムで扱う幅を超えてしまう。なので、アンケートでそういう題材の記事をやって欲しいと書くと、編集部も考えるかも……?
 このように、さまざまなところで、プロとアマチュアに道具の差がないという状況は多く見られるため、プロとアマチュアの境目が薄くなっている。とはいえ、プロとアマチュアの間に歴然と差があるのも事実だ。まずは時間。プロは締め切りまでに完成させなければいけないが、アマチュアは好きでやっているのだから、自分が納得するまで作り込む事ができるので有利である。そして、アマチュアは自分が満足できればいいが、プロは仕事の依頼主とそれを見てくれるユーザーを満足させなければいけない。だから、技術を持ったアマチュアがすぐにプロになれる訳ではないが、アマチュアがハイレベルの作品を送り出すプロになる可能性を持っているのも確かだ。当コラムでは、今後もその動きに注目していきたい。

掲載=PUREGIRL 1998年7月号(ジャパン・ミックス刊)

■コメント
 アマチュアCGAコンテストには1995年(第7回)から行ってるんですが、1996年に『PROJECT WIVERN』の予告編が登場した頃から、レベルがすごくあがってきた印象があります。2000年には新海誠氏が『彼女と彼女の猫』で大賞に入選して『ほしのこえ』に繋がっていく訳です。ここでは映像と同人誌の話でしたが、その後同人ゲームで大人気になった『月姫』が登場し、今ではプロとアマチュアの違いというのは流通の違いでしかなくなってきています。こんな時代において、プロというのはどうあるべきなのかは難しくなってきていると感じます。
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『WHITE ALBUM』は『リフレインラブ』に続く修羅場発生ゲームに認定。主人公の周辺のキャラクターが有機的にかみ合った恋愛ゲームがもっと登場して欲しいですな。
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