20世紀を駆け抜けた、モニターヒロインの系譜学

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様々なフィクション作品に登場するヒロインたち、その歴史を探る

 昔から、メディア上の女性というのは、注目を浴びやすい存在であった。古くは、銀幕のヒロインと呼ばれる大女優。現在は、いろいろな雑誌の巻頭を飾るグラビアアイドルが最先端だろう。彼女たちのような存在は、世界的に見ても普通に存在するわけで、理解しやすいとは思う。
 しかし、ここで取り上げたいのは、実在の人物ではなく、アニメやゲームなどのフィクション作品に登場したヒロインたちだ。またアニメやゲームだけではなく、特撮番組のヒロインというのも、演じている女優としてより、その作品の中のキャラクターとして人気が出ていることが多い。このヒロインたちは、実際の女性よりもファンの熱中度が高いことが多い。実際の女性は年を取るが、フィクションのヒロインたちは当然年は取らない。彼女たちは、記録メディアや各人の記憶の中に凍結されているのだから。ただし、新作が作られる時、声優の問題や演じていた女優の問題が出てくるが……。
 3D-CGもアニメもゲームも同じモニターを使ったメディアだ。アニメやゲームは、3D-CGの制作での参考になる点も数多い。そこで、今回の記事では、モニター上のヒロインたちの歴史を追いかけ、そのエッセンスに注目してみたい。

■モニターヒロインの始まり
 普通の女優というのは、当然だが本人に人気が集まる。たとえば、吉永さゆりは、様々な映画に出演していても、あくまで「吉永さゆり」として人気が出ていた。だが、たまに強烈な作品に登場した女優は、女優本人としてより、演じた役として認識されてしまうことがある。『ウルトラセブン』の友里アンヌ役として出演したひし美ゆり子は、ウルトラ警備隊のアンヌ隊員として強く視聴者に認識されていたことだろう。このような状態は、女優の個性が役に押しつぶされてしまい、のちに他の役を演じることができないという点で、女優としてはあまりいいことではないと世間ではされている。しかし、女優というのは寿命が短いものだ。ショートカットのアイドルとして人気のあった内田有紀がいつの間にか広末涼子にポジションを奪われてしまったように、同じポジションだったら、下の世代にすぐ奪われてしまう。しかし、作品のキャラクターはそのような廃れ方をしない訳で、どちらがいいかは人によるのではなかろうか。
 さて、ウルトラセブンの放映は1967年だが、この当時のアニメにヒロインがいない訳ではない。『サイボーグ009』(1968)のフランソワーズ、『魔法使いサリー』(1966)のサリー、『リボンの騎士』(1967)サファイア、『太陽の王子ホルスの大冒険』(1968)のヒルダなど印象的なヒロインはいた。この中で、特にヒルダは比較的強固なファンはいるが、最近でも本が出版されるようなアンヌ隊員ことひし美ゆり子にくらべるといまいち弱い。これは、視聴者が、まだ「アニメ」という抽象度の高い表現に対して、感情移入がしにくかったのではなかろうか。
 空想美少女がアニメ寄りになってくるのは、1970年代に入ってからだ。アニメブームを呼んだ『宇宙戦艦ヤマト』(1974)の森雪、ミニスカートがまぶしい『コンバトラーV』(1976)の南原ちずる、『機動戦士ガンダム』(1979)のセイラ・マスやフラウ・ボウ、マチルダなど。特に南原ちずるやセイラは、シャワーシーンが話題になった。テレビ本編ではシャワーシーンしかなかったが、ファンサイドの反応は大きく、『OUT』というアニメ雑誌では「悩ましのアルテイシア」というセイラのヌードグラビアがついて、物議を醸した。この頃から同人誌でも、普通のパロディだけではなく、性的なパロディが増え始めている。この辺りから、アニメのキャラが単なる絵としてではなく、実在の人物と同じような存在として意識され始めていたのがわかる。

■宮崎駿ヒロイン
 1979年に『ルパン3世 カリオストロの城』が上映される。公開当時はあまり話題にならなかったが、その後人気を呼び、宮崎駿監督の代表作となった。特にこの作品に登場したクラリスは、ファンの心を掴み、一時期は「ロリコン」の代名詞ともなる。クラリスを演じた島本須美の気高い声にめろめろとなるファンも多かった。
 クラリスはおとなしい少女だったが、初のオリジナル映画『風の谷のナウシカ』(1984)に登場するナウシカは、大変活発なヒロインだった。自分の村の人間を救うために、身体を投げ出して戦う姿に感動した人も多いだろう。ここでも、ナウシカ役は島本須美で、宮崎監督がいかに島本須美を気に入っていたかが伺える。
 世間では、宮崎駿というのは一般向けの作品を作れる数少ないアニメ監督というイメージがある。しかし、TVアニメ『ルパン3世パート2』最終回などを見ればわかるように、もともとはメカや美少女が大好きな監督なのだ。しかし、アニメ業界を背負うという使命からか、そういう欲望に忠実に作品を作らなくなってしまったのは、残念である。

■『うる星やつら』の衝撃
 今でも、オタクというと「ラムちゃん好き」という妙な誤解があり、ドラマ『池袋ウエストゲートパーク』でもアニメファン役の少年はなぜかラム好きであった。それほど一般的には『うる星やつら』のインパクトがあったということだろう。
 高橋留美子氏が描く漫画『うる星やつら』は最初少年サンデーで連載され、その後TVアニメ化された。TVアニメ版は漫画とかなり違うテイストを持っており、漫画版では脇役でしかなかったメガネなどがディレクターの押井守氏の手によって、レギュラーキャラになったりしていた。お雪や弁天堂といったサブキャラたちは、漫画においては、特別な「お雪編」のような話でないと出てこなかったが、アニメは群衆劇となっており、ラムやしのぶほどではないにせよ、準レギュラーの存在となっていた。また、作品内で、ラムの「だっちゃ」やサクラの「おぬしは」という特徴的な喋り方が多く、これがのちのギャル系作品における妙な喋り方の源流になるのだろう。そして、作画面において自由度が高く、アニメーターの暴走がしばしば見いだされ、優秀なアニメーターを多数輩出する作品となった。森山ゆうじ氏や土器手司氏などがヒロインたちを魅力的に描いており、俗に言われる「アニメ絵」のイメージを確立した。
 また高橋留美子氏はビッグコミックスピリッツで『めぞん一刻』という漫画も連載していた。この作品の音無響子は下宿の管理人でなんと未亡人。響子さんのような美人の管理人がいる下宿なら、すぐに引っ越ししたい!と思った読者は多かっただろう。

■新世代特撮ヒロイン
 80年代は、再び特撮番組が盛り上がった時代でもあった。特に『スケバン刑事』は、原作の少女漫画を大胆にアレンジして、大映ドラマ的な面白さを持たせたのが特徴となって、三作までシリーズが作られたほどの人気となった。この時代、アイドルが演じるドラマは流行っていたが、特撮番組的テイストをいれたアクション性が目新しかったのだろう。当時、ファンがヒロインたちをイラストにすることが多かったが、別に本人そっくりに似せなくてもよかったというのが面白い。一作目の斉藤由貴だったらポニーテイル、二作目の南野陽子だったら鉄仮面と口の下のほくろという記号さえ入っていれば、そのキャラとして認識してくれるからだ。ここからも、普通のアイドルというより、あくまで作品の登場人物として認識している面を感じられるだろう。
 斉藤由貴の「キャラ」としての人気は『ドテラマン』というギャグアニメに「サイコユ鬼」という明らかに斉藤由貴をモデルにしたゲストキャラクターが出てきたことからも伺える。ゲストキャラデザインを担当していた後藤隆幸氏は、このことから注目され、TVアニメ『赤い光弾ジリオン』のキャラクターデザインに抜擢された。
 また、1980年代を代表する特撮番組に宇宙刑事シリーズがあるが、このシリーズでは主人公をサポートするヒロインが注目を浴びた。特にシャイダーに登場するアニーは、ミニスカートでのアクションが印象的であった。その後、森永奈緒美はヌード写真集を出したのだが、森永奈緒美が脱いだ!というより、あのアニーが脱いだ!と思ったファンも多かったことだろう。

■80年代ヒロイン
 この頃から、アニメブームを受けて、「アニメファンに向けたアニメ」というのが登場してくる。
 『ダーティペア』(1985)は高千穂遙氏のSF小説が原作だったが、TVアニメ版のキャラデザインは、原作のイラストを担当している安彦良和氏ではなく、土器手司氏が担当している。土器手氏の描く眼の大きい女性キャラはアニメファンに圧倒的に支持された。また、そのコスチュームデザインは、ボディーラインが見えたり、肌が大胆に露出していたり、アニメファンの趣向に合わせられていた。
 1985年に富野監督による『ガンダム』の続編『機動戦士Zガンダム』が始まる。敵組織であるティターンズを裏切ってエウーゴにいくエマ・シーンや、主人公が属する組織エウーゴを裏切るレコア・ロンドなど、特徴的なヒロインが多い。初代『ガンダム』では、ヒロインは後方支援の役目が多かったが、『Zガンダム』では女性は戦闘に直接参加するパイロットが多く登場したのが印象的だった。
 また、少年誌でラブコメ漫画ブームが始まり、その影響がアニメにも出てくる。ラブコメの王様である、あだち充氏は多くの作品がアニメ化され、人気作品となっている。『みゆき』は義理の妹と一緒に住むという背徳感が人気を呼んだ。『タッチ』の浅倉南は、スポーツ部のマネージャーに対する幻想を育てる。それは、ニュース番組で、「南ちゃんを探せ」というスポーツ部のマネージャーの女の子を紹介するコーナーができるほどだった。まつもと泉氏の『きまぐれオレンジロード』は、頼りない主人公が複数の女の子になぜかモテるという、現在に続くラブコメ漫画のフォーマットを作る。鮎川まどかは、外見はとっつきにくいが実は心やさしい、檜山ひかるは、活発な性格で人なつっこい、主人公には二人の妹と様々なヒロインが配置されており、読者は好きなヒロインを選ぶことができた。
 また、TVアニメ以外に、オリジナルビデオアニメ(OVA)が普及し始めたのも、この時期である。OVAは、TVと違い「購入する」作品であったため、実験的な作品とともに、主な購買層であるアニメファンをより意識した作品が増えた。『戦え!イクサー1』(1985)は、美少女漫画を原作にしたOVAだったが、美少女に加え、宇宙刑事などの特撮番組やホラーの要素が入っており、アニメファンのニーズにマッチした作品となった。当初は続編を作る計画はなかったが、3作目まで作られ、「美少女アニメはヒットする」というのを業界に知らしめた。女子高生が異世界に飛ばされる『幻夢戦記レダ』の朝霧陽子は、キャラデザインを担当したいのまたむつみ氏の女性らしい繊細なデザインが人気を呼んだ。朝霧陽子の異世界でのコスチュームがビキニ鎧だったが、この作品により「ファンタジー世界の女戦士の鎧はビキニ鎧」という固定イメージが定着してしまう。
 また、OVAの普及によって、アダルトアニメが登場した。なかでも、『くりいむレモン』シリーズは人気となり、息の長いシリーズ作品となった。特に一作目の『媚・妹・BABY』は、義理の妹である亜美との禁断の愛が受け、映画まで作られるほどだった。主人公の亜美は、その人気から、アニメだけではなく、レコードなど活躍の場所を広げる。更には、亜美役の声優がDJとなるラジオ番組が始まり、リスナーが亜美に人生相談をするという、不思議な状況を生みだした。作品の枠をはみだし、架空のアイドルとなっていった訳だ。現在では、声優のCDアルバムやラジオ番組など普通のことだが、当時のファンはその展開に驚いたものである。

■最強の戦闘美少女
 1992年、ひとつのエポックメーキングな作品が登場した。『セーラームーン』である。もともと、女児向けアニメとして企画・制作されたのだが、各所にオタクのツボをつく設定が盛り込まれており、男女ともに幅広い層に受けた。1992年から1997年の足かけ5年にわたり、全5作が放映され、東映まんが祭りの顔なじみになったり、アメリカやヨーロッパなど欧米諸国でもヒットしたという。業界内でも、ファンが多く、『エヴァンゲリオン』の庵野監督も同作品の大ファンだったようだ。
 『セーラームーン』は、表象的には、東映の戦隊モノの隊員がすべて女子中学生となっという、わかりやすいもの。戦闘少女という、空想美少女のジャンルでは極めてポピュラーなジャンルの作品であるが、オタク的記号を、男性向けではなく、女児向けとしたのが新しかった。
 複数ヒロインならば、ファンは自分の趣味にあったヒロインを選びやすい。しかしこの作品は、単に「キャラの揃えがいい」だけはなく、彼女たちが堅い友情で結ばれていたため、女性ファンを多く獲得したのだろう。主人公のうさぎ以外の女の子たちは学校社会から浮いていおり、うさぎはその彼女たちを何の抵抗もなく受け入れるビッグマザー的存在であった。そして、幾原邦彦監督がその構図をうまく描いた劇場版『セーラームーンR』は高い評価を受けた。のちに幾原監督は『少女革命ウテナ』という不思議な味わいの作品を生み出す。
 また、この作品によって、「萌え」という言葉が普及し始めるが、これに関しては別途項目をたてて解説したい。
 『セーラームーン』で確立された幼年向け戦闘・変身少女というジャンルは、『カードキャプターさくら』に引き継がれる。原作者であるCLAMPは、もともと同人誌出身で、オタクの心をよくわかった作家なのだが、そのような作家が一般向けでのヒット作品を生み出すようになったことは、世のオタク化が進んだことの証明でもある。


■90年代ヒロイン
 90年代はアニメブームが一段落した頃から始まった。
 『不思議の海のナディア』に登場するナディアは、滅亡したアトランティスの王女という神秘的なヒロインであった。黒い肌が魅力的で、貞本義行氏の洗練された線で構成されたキャラデザインは業界に大きな影響を与えた。
 OVA『天地無用!』(1992)は、主人公のまわりにたくさん女の子が登場するという、ハーレム作品である。広大な宇宙空間と岡山というローカル性溢れた場所が舞台というギャップが面白い。スラップスティックぶりが『うる星やつら』を彷彿させ、この種の作品に飢えていたファンを虜にした。のちにOVAやTVアニメにもなり、長期シリーズ化する。
 月刊アフタヌーンで連載されていた藤島康介氏の漫画『ああっ女神様っ』(1988)に登場するベルダンディーは癒し系ヒロインの代表格だろう。あまり目立たない主人公に尽くす女神ベルダンディーの姿に、こんな女神が自分の家にきてくれれば……と妄想を持つファンも多く、アフタヌーン本誌での読者投稿コーナーで、見事なハマリっぷりや妄想を報告する読者がいたぐらいだ。ベルダンディーが自衛隊の戦闘機のノーズアートに描かれていたという報告もあるから、その人気は計り知れない。おそらく、基地祭のようなイベントの時のみの限定塗装だと思われるが。OVA(1993)でベルダンディーを演じた井上喜久子はこの作品で「何でも許してくれるお姉さん」というイメージが定着した。
 大ヒットした『新世紀エヴァンゲリオン』(1995)でも、多数のヒロインが登場したが、特に人気を呼んだのが、綾波レイであった。彼女は、出生に秘密を持ち、あまりしゃべらないというミステリアスなヒロインだった。エヴァの前に『セーラームーンS』では、同じようにあまりしゃべらない土萌ほたるというキャラが人気を呼んでおり、受け入れられる下地ができていたといえる。惣流・アスカ・ラングレーは、学園ドラマでよくある、鼻っ柱の強い天才少女だったが、その天真爛漫さに惹かれるファンも多かった。しかし、実際は親の愛に飢えた少女であり、最終回付近の壊れた姿を愛するという少々ひねくれたファンもおり、複雑なファン層を形成している。
 『機動戦艦ナデシコ』では、ホシノ・ルリという14歳の少女の人気が爆発。アニメ雑誌のキャラランキングでも一位を獲得した。「バカばっかり」という冷めた視点を持ちながら、なんだかんだ言ってクルーを助ける愛らしさが人気を呼んだ。
 『少女革命ウテナ』のウテナは、男装の麗人という、宝塚アニメとでも呼べそうなビジュアルだ。そのため、従来のアニメと違い、男性ファンより女性ファンが目立った作品である。『セーラームーン』で女性ファンの心をつかんだ幾原監督ならではだろう。


■ゲームヒロインの台頭
 1980年代から、コンピューターの発展に従い、ゲームのヒロインという新ジャンルが生まれてきた。『アテナ』(アーケード・1986)の麻宮アテナや『ワルキューレの冒険』(ファミコン・1986)のワルキューレなど下地を作るような作品が登場していたが、決定打となったのが、1989年に発売されたナムコのアーケードゲーム『ワルキューレの伝説』のワルキューレだろう。もともとゲームは、ユーザー自身がプレイヤーキャラクターを動かすために感情移入しやすいのだが、『ワルキューレの伝説』の場合、各所に冨士宏氏の手によるイラストが挿入され、キャラクター像が明確になっていた点が、従来のゲームと違っていた。また、ゲーム中のオブジェクトキャラ(いわゆるドット絵キャラ)も、旧来のゲームより大きめで、ワルキューレの細かい仕草がよくわかるものであった。ゲーメストムック「ギャルズアイランド」1号でも、人気ランキング一位となっており、その人気がよくわかる。その後、ナムコは『ワンダーモモ』など美少女がプレイヤーのゲームをよく出し、硬派ゲーマーからはナムコは軟弱になったと嘆かれる。
 この時期のゲームヒロインはナムコが独占していたが、その流れを変える作品が登場する。1991年に発売されたカプコンの『ストリートファイターU』に登場する春麗は、ゲームの爆発的ヒットと伴って、瞬く間にゲームヒロインのトップの座についた。『ストU』のオブジェクトキャラは、それまでにないぐらい巨大で、その巨大なキャラをプレイヤーの思うがままに操れるという快感が、ヒロインの魅力に繋がった。
 SNKも『ストリートファイターU』に対抗して、『餓狼伝説』を開発。このゲームに登場する不知火舞は、乳を揺らすという直接的なビジュアルで男性プレイヤーの心を掴んだ。格闘ゲームヒロインの異色キャラが『サムライスピリッツ』のナコルルだ。アイヌの14歳の可憐な女の子が戦う姿は、いかにも格闘技に強そうな女の子が戦う格闘ゲームの世界の中においてひときわ目立っていた。


■ギャルゲーヒロインへの変遷
 格闘ゲームヒロインのブームは3D-CGキャラにうつり、現在のゲームヒロインの地位を占めているのが、俗にいうギャルゲーのヒロインだ。
 ゲームといえば、アクションゲームを指す時代があったが、ファミコンの普及とともに、アクションに弱いユーザーのためにシミュレーションゲームなどの思考型ゲームに人気が出てくる。当時コンシューマーゲームマシンはファミコンなど、まだビジュアル面で弱かった。しかし、国産のパソコンPC-98シリーズは、640×400ドット、4096色中16色の表現が可能で、この機能を利用した思考型ゲームが続々と登場する。
 その機能を最大限に生かしたのが、ガイナックスの『プリンセスメーカー』(1991)だ。このゲームでは、赤井孝美氏が描くところのキャラが、大きく表示され、大変インパクトがあった。また「娘を育てる」という妙に背徳観のあるゲームの設定も秀逸で、「育成型シミュレーション」というジャンルを確立する。そして、プレイヤーが教師となって、5人の生徒を教育するヘッドルームの『卒業』(1992)の登場によって、ギャルゲーというジャンルが確立されていく。原画に起用された竹井正樹氏のかっちりした絵柄による美少女と美しいイベントCGに、プレイヤーは虜になった。
 この時代のギャルゲーは、一般ゲームであったため、プレイヤーと女性キャラの関係は、親子だったり、教師と生徒だったり、マネージャーとアイドルだったりと、最終的に恋愛関係を目指したものではなかった。結婚するエンディングもあったが、あくまでそれはエンディングの一つであったのだ。一方、同時期に出ていたいわゆる18禁の18禁ゲームと呼ばれるゲームに目を向けると、女の子と恋愛をする、というより、女の子とSEXをするだけ、というものが多かったため、『卒業』などのようにキャラに感情移入できるものはなかった。
 しかし、18禁ゲームにもギャルゲー的部分を取り入れたものが登場する。エルフの『 同級生』(1992/18禁)である。夏休みの間の2週間を利用して、いろいろな女の子をナンパして肉体関係を持とうとするこのゲームは、現在のギャルゲーのフォーマットを決めたといえよう。このゲームの原画は『卒業』を担当した竹井氏で、18禁ゲームのビジュアル面のレベルを一気に引き上げた。そして、秀逸だったのが、青春っぽさを上手く描いた甘酸っぱいシナリオで、これ以後、18禁ゲームにおいて、シナリオが重要となっていく。
 そして、一般ゲーム市場はパソコンからコンシューマーに移っていた。コンシューマーゲーム業界にギャルゲーの力を思い知らせたのが、コナミの『ときめきメモリアル』(1994)である。このゲームが最初に発売されたのは、PCエンジンのCD-ROM2というあまりパッとしないハードであり、その上宣伝もほとんどされていなかったが、プレイヤーの口コミで盛り上がっていき、わざわざハードを買う人間も出た。当時、CD-ROMハードはまだ少なかったが、このCDの能力を最大限に活かした特徴が、「登場キャラの声が全部入っている」である。今でこそ当たり前の「声」であるが、当時は重要なシーンだけ声が入るものが多く、このゲームのように全部入れたものはなかった。同時期に起きた声優ブームとあいまって、『ときメモ』の声優は、CDアルバムやラジオ番組を担当するなど、人気アイドルと化していった。このゲームは、各キャラに複数のイベントが用意されていて、条件をクリアーするとそのイベントが見られ、最終的に一番愛情値の高いヒロインがプレイヤーに告白してくれる。このシステムによって、シナリオが決まっているアドベンチャーと違い、プレイヤーだけの物語ができた。また、このゲームのビジュアルは綺麗といわれるようなものではなかったが、逆にこのおかげで、ゲームシステムとともに、プレイヤーの想像力が入り込む余地ができた。ユーザーの想像力が発揮できる点が『ときメモ』の人気を生んだといえる。
 その後、同級生シリーズは『同級生2』(1995/18禁)で人気を不動のものとする。より洗練されたシナリオやビジュアルに、前作のファンや新規ファンは夢中になり、大ヒットとなった。ゲームの攻略が難しかったため、各所のパソコン通信の掲示板では攻略情報が飛び交っていたという。
 それまでギャルゲーというと、シミュレーションタイプが多かったのだが、リーフという新参メーカーが発売した『雫』(1996/18禁)は、大ヒットこそしなかったが、コアなユーザーの間で強く支持された。このゲームは、ビジュアルノベルという形式を採用し、『弟切草』などのサウンドノベルのように大きめの文字でシナリオを表示し、プレイヤーにじっくりシナリオを読ませた。このシナリオを重視するゲームシステムは、リーフのスタイルとなり、その次の『痕』(1996/18禁)は、『雫』でファンになったユーザーを巻き込み、ヒット作となった。4人のヒロインが登場して、様々なタイプのシナリオが楽しめる『痕』を今でも好きなユーザーは多く、続編を望む声も多い。
 そして、このビジュアルノベルの形式で既存の恋愛SLGを再現したのが、『ToHeart』(1997/18禁)だ。攻略できるヒロインは8人と多く、高橋龍也氏の巧みなシナリオによって、プレイヤーはゲームの世界に没入できた。特にマルチというアンドロイドのシナリオは、多くのプレイヤーの涙腺を刺激し、大量のマルチファンを生み出している。この頃から、18禁ゲーム業界に「泣きゲー」なる言葉が生まれてきた。
 そして、タクティクスの『MOON.』(1997/18禁)『ONE』(1998/18禁)という話題作を制作したスタッフが、Keyとして独立、満を持して送り出したのが『Kanon』(1999/18禁)である。スタッフは、現代のおとぎ話を目指したという通り、現実的というより幻想的なシナリオが多く、これをプレイして泣かなければ人間ではないと極論するプレイヤーも現れた。羽根をつけた鞄を背負う月宮あゆは、その愛らしい容姿に似合わない、重い過去を背負っている。このように各ヒロインは、なんらかの過去の傷があり、プレイヤーはそれを癒す手助けをする。このスタッフは現在新作『AIR』を制作中で、また話題を呼ぶことは間違いないだろう。

■アイドルヒロイン
 作品中のヒロインをアイドルとして扱うのは、『クリーミィマミ』などあったが、意識的に使い始めたのは、『超時空要塞マクロス』のリン・ミンメイだ。劇場版『愛・おぼえてますか?』で飯島真理の歌とともにクライマックス戦闘シーンが流れるのは、アイドルとアニメの融合を感じさせた。
 その後、マクロスのスタッフが制作したOVA『メガゾーン23』では、実体として存在してないアイドル・時祭イブが登場する。この作品は、架空のアニメの世界に更に仮想世界が存在するというメタな状況を生み出した。彼女はテレビの世界で大人気アイドルとして活躍していたが、バハムートという巨大コンピューターが制作したCGアイドルであることはファンには全く知らされてない。この事が話の鍵になっているが、『マクロスプラス』というマクロスの続編に登場するシャロン・アップルというバーチャルアイドルは、一歩進んでいる。ファンは、シャロンがバーチャルアイドルであることを知っているのだ。これは時代の流れなのだろう。シャロンは、主人公のイサムが好きになってしまったために、巨大戦艦マクロスや無人戦闘機を使って攻撃をするという、大変危険なアイドルで、森本晃司氏によるコンサートシーンでは、新世代のアイドルビジュアルを見せてくれた。
 さて、現在のCGアイドルブームの下地となったのが、3D-CGを使ったゲームの盛り上がりだ。セガの『バーチャファイター』の登場は衝撃的であったが、ビジュアルは鋭角なポリゴンキャラで感情移入は難しかった。まだ技術レベルが低かったのだ。しかし、『バーチャファイター2』になって、ぐっと現実の人間のビジュアルに近付き、ファンも増えてきた。この辺りから、3Dキャラもイケる、という風潮になってきたと思われる。そして、テクモの『DEAD OR ALIVE』では、乳揺れというセクシャルな描写で話題を呼んだ。ナムコの『ソウルキャリバー』では、アーケード版よりドリームキャスト版のほうがビジュアルがグレードアップするという面白い事態を生み出し、家庭で遊べるゲームもここまできたか、という感慨を与えてくれた。また『DEAD OR ALIVE』ほどではないが、セクシーなビジュアルが多かったのが特徴だ。
 CGアイドルと明確に打ち出したアイドルは、ホリプロが生み出したDK-96こと伊達杏子が初めてだろう。鳴り物入りでデビューしたが、アイドルというよりイロモノ的扱いが多く、定着しなかった。アイドルは、大資本を投下して作られるトップダウンタイプのアイドルと、ファンの力で大きくなっていくボトムアップタイプのアイドルがいるが、DK-96はトップダウンタイプであった。このタイプの場合、効果的な戦略や仕掛けが打ち出せないと尻窄みになってしまうことが多く、DK-96もその道に行ってしまった感がある。しかし、現在のCGアイドルシーンを見ると、人気が出る可能性はあったといえよう。
 そして、ボトムアップタイプのアイドル代表がテライユキだ。漫画家のくつぎけんいち氏が趣味で作っていたテライユキが、ファンに支持され、PS2でのソフトが制作されたりと、大きな盛り上がりを見せているのは、本誌の読者ならご存じだろう。
 海外に目を向けると、3Dアクションゲーム『TOMB RAIDERS』のLALAが、アイドル的人気を持っている。日本ではあのビジュアルは「研ナオコみたいだ」などとあまり人気はないのだが。海外のファンサイトをのぞくと、日本と同じようにLALAのイラストを描いたりという普通のファン活動をしているのだが、過激なファンになるとLALAが裸で動くゲームのパッチデータを作ったりしている。ファン活動もゲームは解析していじるというハッカー文化の流れにのっているのが面白い。
 この「3D-CGアイドル」のファン層というのは、従来のアニメファンとも違うし、アイドルファンとも違う。まだ未完成のマーケットであり、今後どのようなマーケットとなっていくのが興味深いところだ。

■「萌える」とは?
 最近、妙に聞くようになったのがこの「萌える」という単語。これは「でじこ萌え〜」というように架空のキャラクターが好きであることを表現するためにファンの間で使われる言葉だ。「野球に燃える」など何か熱中する意味である「燃える」が、何らかの形で「萌える」に代わった。もともとは、女性キャラに対して使う事が多かったのだが、最近ではかなり一般化され、本来の「燃える」もわざと「萌える」という表現するようになってしまい、最近では特に深い意味は持ってない感がある。あえて言うのなら、女性キャラクターに対して使われていたということから、かわいいものが好きな場合のみ、使ったほうが、より合っている感はある。
 「萌える」の語源として、NHK教育で放映されていた『恐竜教室』の鷺沢萌や『セーラームーンS』の土萌ほたるなどがよく挙げられるが、放映年を見ると『恐竜教室』は1993年、『セーラームーンS』は1994年である。しかし、「萌え」という言葉をよく見かけるようになったのは1992年の『セーラームーン』以降のパソコン通信の掲示板なので、上記のキャラクターは関係ないといえる。パソコン通信は誤変換をわざと使うなどの造語の宝庫であり、「燃える」の誤変換が、この言葉を生んだと考えるのが自然だろう。
 また、複数の作家が「燃える」を多用していた点も注目したい。漫画家の伊東岳彦氏が『宇宙英雄物語』などで「このシチュエーション、燃える!」という表現を連発していた。また『燃えよ!ペン』などを描いている漫画家、島本和彦氏も「燃える」漫画家である。彼らの言動も、ファンの間で「燃える」を恒常的に使わせるようになった原因の一つだろう。

■次世代モニターヒロイン
 最近の流れを、一言でいうと「ミもフタもない設定・キャラ」が受けるということ。以下にその例を挙げていきたい。
 少年マガジンで連載中である赤松健氏の『ラブひな』は、東大を目指す浪人生が女子寮の管理人をするというお話だ。複数のヒロインたちに囲まれた主人公の姿は、まるでギャルゲーのよう。連載当初、このベタベタな設定に敬遠する人も多かったが、いざ単行本が出てみるとヒットした。朝日新聞で「視聴率は悪いがインターネットや単行本は人気」という点で記事にされたぐらいである。その記事によると単行本は累計420万部売れたそうだが、視聴率は2%程度と低いという。雑誌でのアンケートもそれほど上位ではないらしい。しかし、アニメのDVDの第1巻の予約状況は好調だそうで、このように雑誌のアンケートや視聴率だけでははかれない層にヒットすることもある。
 『デ・ジ・キャラット』は、もともとブロッコリーというグッズ会社が運営するショップ・ゲーマーズの会報誌に載せられていたブラックジョークのきつい4コマ漫画であった。ヒロインであるでじこのキャラデザインも、「ネコミミ」「メイド服」とオタクなら大喜びする記号が大量に装備されているのだが、これには「オタクはこういうものが好きだろう」という悪意がこめられていた。こんな「ミもフタもないデザイン」は普通なら失笑を買うだけなのだが、この「ミもフタもなさ」がウケてしまったのだから、世の中わからない。グッズが大量に作られ、TBSの『ワンダフル』内で、TVアニメ化され、それを収録したDVDもヒットを飛ばす。今夏もまたアニメが作られたり、西武線に一編成まるごと『デ・ジ・キャラット』の広告という電車が走ったりと快進撃だ。当初は、オタク人気が高かったが、最近は面白いウケ方をしている。それは小中学生などの低年齢層に受けているということだ。実際、現在のゲーマーズ会報誌に『デ・ジ・キャラット』のイラストを投稿しているのは小中学生や高校生の女子が多い。これをコンパイルの『ぷよぷよ』のアルルの人気構造と似ていると指摘する意見もある。その指摘をしたJ-o氏によると、ファン層がマニア層から低年齢層に移行した、キャラクタービジネスの展開方法、ブロッコリーとコンパイルの成長度合いなど数々の相似点があるという。
 そして、これら全てを統合するような媒体が存在する。それがメディアワークスより刊行されている雑誌『電撃G'sマガジン』である。この雑誌は、当初コンシューマーゲームでのギャルゲー情報をメインとしていた雑誌だったのだが、コンシューマーゲームのギャルゲーブームが終わってしまったため、内容がオリジナル企画にシフトしつつある。このオリジナル企画記事では、昼は先生、夜はママを演じてくる複数のヒロインが登場する『ハッピーレッスン』、12人の妹から理想の妹を選ぶ『シスタープリンセス』など、エッジな企画ががんがん登場している。特に『シスタープリンセス』はゲーム化も決まっている人気企画なのだが、12人の妹たちは「お兄ちゃん」「お兄様」「おにいたま〜」「あに様」など、様々な呼び方で呼んでくれ、なおかつちやほやしてくれるのだ。雑誌では、毎回一人の妹がクローズアップされ、その子の日記のような記事が掲載されている。これを読むと、昔の少女漫画のような印象を受ける。恋愛描写がタブーとされていた初期の少女漫画では、ヒロインが憧れの男性に「私のお兄さまになってください」と言っていたが、先祖戻りをしているのかもしれない。
 ともあれ、この雑誌は今の流れを読むためには必読といえよう。『電撃G'sマガジン』に近いコンセプトの『MEGAMIマガジン』(学研刊)もじわじわと人気を広げているので要チェックだ。

■次はなにがくる?
 前の章を読んで、頭を抱えた人も多いかもしれないが、実は普通のオタクというのは、先ほどのようなミもフタもない作品は嫌がる。かといって、オタク的記号に溢れているため、一般人も敬遠する。にも関わらず、人気が出ているということは、オタクでもない、一般人でもない、という中間層がマスとなっている事を意味してないだろうか。渋谷駅でさわやか湘南カジュアルファッション風の青年が『ラブひな』を読んでいたという報告もあり、現在は、旧来の文脈だけでは理解できない状況となっている。この中間層を意識した作品が今後のキーポイントとなるのではなかろうか?
 また、最近の子供たちのヒットする作品も、従来と比べるとオタクくさいと思えるものが多い。その傾向は、『セーラームーン』や『カードキャプターさくら』など女児向けで特に顕在的である。
 そして、90年代までは「戦闘美少女」というジャンルが強力だったが、最近はこのジャンルが影を潜めている。「戦う物語」に人々が疲れてしまい、「強いヒロイン」よりも、受け手をやさしく受け止めてくれるような「癒し系ヒロイン」を求めているのだろう。
 それと現在のヒロインシーンを眺めてみると、中心となっているのがアニメからゲームにシフトしているのがよくわかる。それも一般ゲームから18禁ゲームへと移行しているのだ。18禁ゲームは、ヒロインを魅力的に描くことが至上目的だが、他の作品ではヒロインの魅力以外にも要求されることが多い。18禁ゲームの単一目的ぶりが、この盛況に繋がっているのだろう。
 以上のように状況を眺めるとカオスとしかいいようないが、人は魅力的なヒロインを求めていることには変わらない。この原稿が、次世代ヒロインを生み出すための研究材料となってくれたら、幸いである。

掲載=UltraGraphics Vol.1号(アスキー刊)

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■コメント
 アスキーから出ていた『3D Graphics』のスタッフから新雑誌『Ultra Graohics』にて3D CGヒロイン特集をするので、ヒロインの歴史を書いて欲しいと頼まれて書いた原稿です。いろいろネタの準備はしたんですが、原稿以外の見せ方の部分などで活かせませんでした、反省。こんなに大量だと原稿を書くだけで精一杯でして…。
 「モニターヒロイン」という言葉は編集の方が考えたもので、なかなか面白い造語だと思うんですけど、この言葉だと漫画などの印刷物が入らないんですよね。この記事でも、印刷物の影響は薄いと判断して、ほとんど無視しています。オタク歴史の中でも、漫画はアニメ化されてないと影響が小さいという。テレビの「懐かしのテレビマンガ」と言った番組でも、TVアニメしか出ないで、原作の漫画は出てきませんし。
 掲載するにあたって読み直してみましたが、豆知識ばかりで本筋が少ない感じです。さすがにこの量だと改稿するのは大変なので、一部しかいじっていませんが、それでも大雑把に歴史をつかむことはできると思います。最後の結論部分での「中間層」というのは、オタクのライト化といったほうが良い気がします。
 そういえば、この特集で扱われていた3D CGヒロインですが、今はどうなんでしょうか。サムスンのイメージキャラクターがFeiFeiだったりしてますが、あんまりぱっとしない印象があります。バーチャルアイドルも今はバーチャルネットアイドルのほうが盛り上がってますし。それだって2年後ぐらいにはまた変わっているんでしょうが。
 なお掲載当時、「ゲームヒロインの台頭」のワルキューレの辺りで謎の空白がありました。これは元の文で“『ソウルキャリバー』のヒロインがワルキューレ”と間違いを書いており、ぎりぎりで修正したので、あのように空白ができてしまったのです。

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