90年代のリアル−大塚ギチ 1996/10/06
90年代のリアル−大塚ギチ

 ゲーム雑誌なんてみんな同じに見える昨今だが、頑張っている人もちょこちょこ見掛ける。中でも気に入っているのが大塚ギチだ。この人は今のゲームシーンをプレイヤー側から描けば一番のライターといえるだろう。代表作はバーチャファイターの対戦プレイヤーを描いたドキュメント「トウキョウヘッド」(アスペクト刊)だが、彼の本領は雑誌で発揮される。休刊したゲームウララの鉄拳2噂レポートやNewtypeでのゲーム記事、Comic Newtypeでの永野護のインタビューなどには短いながらも大塚ギチらしさがにじみ出ている仕事だ。
 最近ではファミ通のバーチャファイターTODAYに「東京ヘッド」なる小説を連載開始した。冒頭の描写でノーライフキングを髣髴させるこの作品、第一回目では少年版ホットロードともいえるテイストが見られ、今後の展開に期待。

 さてこの大塚ギチを初めて認識したのが必本スーパー(現64)1994年12月号に載っていた「『バーチャファイター』は90年代の『プラレス三四郎』である」という2pに渡る文章だった。おまけにバーチャファイター特集のレイアウトが「ガンダムセンチネル」(大日本絵画社刊)の真似で、更にはバーチャファイターを楽しむ為の必読書として「ガンダムセンチネル」を紹介するという大ワザぶり。この記事を書いていたのが大塚ギチで、奥付を見ると宝島社の編集という事が判った。
 また、その頃の必本は人気コーナーであった各ソフト毎の投稿コーナーを統合した。一本化された読者コーナーでは数少ない普通の投稿に編集者が情け容赦ないコメントをつけているという状況で、読者からは投稿コーナーを元に戻して欲しいという要望、そして新読者コーナーに対して非難が集中した。この読者コーナーの担当が大塚ギチと後藤勝だったのだ。
 そして、読者の非難に対する解答としてライターと編集者たちの座談会が載るのだが、大塚ギチは全然読者に媚びないばかりか、読者を挑発する。「FFやメガテンのコーナーを復活させろという人が多いけど、あのような読者コーナーはファン以外が入れない状況を生み出す。そういう閉じた場で遊びたいのならファンロードとかでやって欲しい。遊び場は僕らが用意するのではなく、君達が作ればいいんだ」とまで言ってしまう。
 普通、読者コーナーといえば編集部と読者が仲良くコミュニケーションをする場だが、大塚ギチはあえて同人的読者を突き放す。仲間内で楽しければいいという読者に対して愛のあるパンチを送る大塚ギチに、従来のゲーム雑誌の編集者とは違うものを感じたものだった。

 その後もセガの有井氏のCGを前面に押し出したバーチャファイタービジュアル特集、雑誌内雑誌hpなど、刺激的な記事を作っていたのだが、宝島社を辞め、フリーのライターとなってしまう。「JICC(現宝島社)で芽を出した人材は辞める」というのはやはりジンクスなのかも知れない。
 宝島社の雑誌は会社の方針なのか、一、二年で内容がバンバン変わる。Hippon Super時代は長文が読めるゲーム雑誌としてマニア人気が高かったが、そのレビューをばっさり斬った後は普通の雑誌になりかけていた。そこに大塚ギチが登場してまたスリリングな雑誌になっていたが、辞めた後は普通になり、今の64では昔の気骨など見る影もない。長文レビューが多かった頃に活躍した佐藤大や浅野耕一郎などはソニー・マガジンズのEDに移り、その魂はハイパープレイステーションに受け継がれているといえる。現在、暴力温泉芸者が載るぐらい懐の広いゲーム雑誌などハイパーゲームプレイステーションしかないといえよう(笑)。

『バーチャファイター』の“リアル感”は当然、『プラレス三四郎』だけではなく、“80年代少年”の最大公約数であり、“エイティーズチルドレンズメディア”の集大成である。僕がそんな “新しいスタイル” に高揚しながらも何処かに“80年代”の匂いを感じた理由のすべてはここに集約される。あくまで僕達の世代にとって“リアル”なゲーム。
          【必本スーパー 1994年12月号より】

 彼の強みは、80年代を恥ずかしいなんて思わないところだ。今、80年代がいかにスカだったか語る人々が多いが、彼は80年代と今の連続性をきちんと捉え、80年代がいかに好きだったかを語る。それは引用した上の文章や「僕達の“リアル”」や「ポストバーチャファイタージェネレーション」という用語を使う辺りで強く感じるだろう。
 どんなにスカだったと主張しても80年代はあったのだ。それを頑固に否定するより、80年代文化の様々な影響を認識した上で行動するのが前向きというものではないだろうか。
(以上敬称略)

●補足
 この文章を読んだ方から、大塚ギチ氏をあまり評価しないと言われたのだが、この文章はあえて煽って書いた文章なのでちょっと補足。
 あえて煽ったのは、ゲーム関係のライターがあまりにつまらないから。この人ぐらいに刺激的な文章を書く人間は数少ない。
 ただ、この人はゲーム関係では??な発言も多い。代表的なのがComic Newtypeでの永野護インタビュー。このインタビューで永野の発言を完全肯定して「エアーズアドベンチャー」に期待してた辺りなどは何だかなー感に溢れていた。多分、永野護ファンだからそうなってたのだろうが。
 だから、彼が真価を発揮するのはゲーム関係の話題より、80年代的同世代感に溢れた文章である。例えばHyperPlaystationのレコードレビューでの「ガンダムのファン、ガンダマーなら…」などというヨタ話など。最近だとComic Newtypeで「今注目されているジャパニメーションといえば湘南純愛組」なんて小技の効いたギャグを飛ばしている。コミックビームでやっている連載記事も毒舌バリバリで愉快。
 というようにゲームライターというよりゲーム系コラムニストとして優秀というべきなのかもしれない。
(1997/02/27)

●さらに補足
 その後、本人と何回か会話しているため、この文章とは大きく違う認識が出てきました。そのため、ここに書いてあるのは、あくまでメディア上での大塚ギチに対して1996年の自分が思っていたことだと思って欲しいです。
(1998/12/01)

■コメント
 当時いかに大塚ギチ氏に自分が注目していたかがわかる文章。G2Oも『フォー・ザ・バレル』もなく『トウキョウヘッド』の連載を始めたばかりという時代に書かれた。
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