御嶽山噴火の恐さを実感する『御嶽山噴火 生還者の証言』(小川さゆり) : ARTIFACT ―人工事実―
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はてなブックマーク - 御嶽山噴火の恐さを実感する『御嶽山噴火 生還者の証言』(小川さゆり)
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※Kindle版は2/22まで380円でセール中

 御嶽山噴火で生存した人が本を書いていると知って、読んだのだが、この本は登山に関心がない人でも、ぜひ読んで欲しい。噴火の恐ろしさが伝わってくるのはもちろん、災害時の心理がよくわかり、災害に巻き込まれた時、どのような行動をとればいいのかということを考えさせてくれる本であった。

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 自然災害では助かった人から「運が良かった」という発言がよく出るが、それだけでは何も教訓が残らないということに筆者は危機感を持ち、本を書こうと思ったそうだ。
 筆者は登山ガイドをしている山のプロだが、そんな山のプロでも、噴火に遭遇した時にどうすればいいかという心構えはなかった。しかし、これまでの経験から導き出された身を守る方法がとれた。まず、飛来する噴石から身を守ることで、身を隠せる岩陰に入り、とにかく頭を守ることを重視した。助かった人はバックパックで頭を守っていた人が多いようだ。地震の避難訓練などでもよく言われるが、とにかく頭を守ることが大事だというのがわかる。
 また、火山性ガスも発生しており、こうしたガスを吸い込まないために、タオルなどでガスを吸わないようにするのも大事えだった。
 御嶽山の噴火は水蒸気噴火で、地球から見ればくしゃみ程度の小さい噴火であったが、これだけの犠牲者が出てしまった。この噴火では火砕流が発生したが、火砕流といえば、高温なので巻き込まれたら絶対助からないというイメージがある。しかし、御嶽山の火砕流は、樹木が焦げない程度の温度の「低温火砕流」だそうで、人間が即死するような温度ではないため、火傷をしたが助かった人も多かった。
 噴火時に写真撮影している人が多くいたが、緊急時は1秒でも大事だから、撮影より、とにかく自分の生命を守る行動に出て欲しいと筆者は語る。筆者がいた場所の場合、噴石がくるまで60秒ほどあったようで、その間にどれだけの行動ができるかが重要だったという。
 自分も、何か突然異変が起きたら撮影してしまいそう……。カメラを持っている人が少ない時代は、こんな注意もなかったんだろうが、これだけ携帯電話などでカメラを持った人が増えると、こうした注意喚起も必要になるのだろう。
 ただ、そこで撮影した人たちの写真が本書では使われており、この写真がなければ、恐ろしさの実感度合いは違う。筆者が講演する時でも、この写真を使わせてもらっているそうで、写真を撮るなと言いながら、どうしても矛盾してしまうところがある。

 噴火後、すぐに噴煙で真っ暗になるが、噴煙が消えて視界が戻ると、一面真っ黒の世界に変わっており、地獄だと思ったそうだ。しかし、これは本当の地獄ではなかったと筆者はいう。それは亡くなった登山者をその目では見てないからだと。
 筆者は途中で出会った足を負傷した女性の登山者が、後で亡くなったと知り、後悔に苛まれ、この本を書く強い動機になった。負傷して、その後亡くなった登山者たちをもっと見た生存者の方たちの後悔はどれほどのものか……。

 登山ガイドで救助員もしている筆者は、なぜ助けなかったのかとマスコミに質問されたり、ネットで叩かれたりしたそうだが、本を読めば、あの場にいた人たちは自分の命を守るので精一杯な状況だというのはよくわかる。生存者に対するこのような批判は実に無意味で残酷だと感じた。彼らが一番後悔しているのだから。
 筆者は登山ガイドという立場もあり、かなりマスコミの取材を受けたそうだが、とにかく自分たちが欲しいフレーズを相手が言うまで(ここでは「自己責任」)、質問をぶつけてくるというのは、マスコミの常として非常に納得であり、恐ろしかった。
 災害時、マスコミは人を助けたヒーローの話を求めがちで、それは報道の受け手もヒーローを求めるからだろう。このヒーローを求める欲求の逆が、「なぜ助けなかった」という責めであるからこそ、筆者は災害にヒーローはいらないと説く。
 御嶽山噴火では、そのようなヒーローの話として、亡くなった女子小学生に自分のジャケットをかけてあげた男性の話が多く取り上げられていた。この亡くなった女子小学生と女子高校生は同じグループで登山していたので、よく報道されていたのだが、名前で検索すると、このグループが統一教会だったという、本や報道では触れられていないことを知る。他宗教のシンボル的な存在である山に、なぜ登るのかは不思議であった。
長山照利さんの「帰歓式」に700人参列 | 世界平和統一家庭連合 News Online[↑B]
伊藤琴美さんの「帰歓式」に友人ら700人が参列 | 世界平和統一家庭連合 News Online[↑B]
二世の中核だった琴美さん、照利さん | 世界平和統一家庭連合 News Online[↑B]
 宋総会長が、VISION2020(統一教会が進めているという計画。内容はよくわからない)が進むようになるために犠牲になったと考えていただきたいと言っていて、恐ろしい。
4人の「聖和者」に対する宋龍天総会長の祈祷 | 世界平和統一家庭連合 News Online[↑B]
 こちらでも「今回の犠牲を泣いて悲しむのではなく、むしろ感謝してまいります」と恐ろしいことを言っている。

 筆者が出会った人で、ある女性を助けられなくて後悔していると言っていた人が出会った女性というのが、以前、産経で記事になっていた女性であった。この記事を読んだ時も、その凄惨な描写に恐怖したが、本書を読むと、当時の状況の理解が深まった。
【御嶽山噴火1年】生還女性が初めて語る「あの時」 「焼け死ぬのか、溶けるのかな…」(1/6ページ) - 産経ニュース[↑B]
※この記事はかなりショッキングな内容が含まれているので注意

 前半は噴火での体験談で、どのようにして生き延びられたかが語られる。そして、生き延びられなかった人たちが多くいて、なぜ自分は生きているのか、もっと助けられなかったのかという後悔にどれだけ苛まれているのか、非常に伝わってくる。
 後半は、マスコミの集中的な取材を受けた当事者ならではの体験談。マスコミの取材は受け手の欲求から生まれる部分も多く、災害時の報道時、報道を見ている側はどんな反応が生存者を苦しませるのかを考えさせてくれた。

 御嶽山の噴火について、より詳しく知りたい人にはこちらの本をお勧めする。

※Kindle版は2/22まで380円でセール中


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1997年から運営している個人サイト。2002年にブログ化。オタクネタを中心で書いていたが、最近はウェブサービスの話題が多い。
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