死の喪失感と真摯に向き合うライトノベル『テルミー』(滝川廉治) : ARTIFACT ―人工事実―
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 Amazonアソシエイトのレポートを見ていたら、『テルミー』というライトノベルがKindleで売れていたのだが、集英社ダッシュエックス文庫1周年記念のセール価格で、1巻120円、2巻まとめて240円とずいぶん安かったので興味を持った。
 あらすじを読んで面白そうだと思い、ちょうど前島賢氏が年末にeBookJapanのコラムで紹介していたのを知り、前島氏のお勧めならはずさないだろうと思って、買ってみた。普段は大体積ん読なのだが、ちょうど短めの小説を読みたいタイミングだったので、すぐに読んでみたところ、良い小説だったので紹介したい。
 残念ながら、この小説は未完で、2巻以降が出ていない。作者のブログによれば、3巻執筆中とのことで、続きが出るためにも、もっと知られて欲しいのだ。

※セールは1月7日まで

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 この物語には、二十六人の高校生の男女が登場する。
 当然のようにこの物語は、二十六人の死と青春を描くものになる。

 そしてこの物語は、必ずハッピーエンドを迎える。
 なぜなら、この物語は始まりの時点が最も悲惨で、最も間違った状況だからだ。
 彼らのうち二十四人は、物語の始まりと同時に死亡している。

 そんな一文から、この小説は始まる。

 状況はこうだ。
 月之浦高校二年三組を乗せた修学旅行のバスが、修学旅行中、土砂崩れに巻き込まれる。二十六人のクラスメートのうち、直前のケガで修学旅行に参加し損ねたひとりの少年と、奇跡的に生き残った少女をのぞいて、二十四人の生徒は、全員、死亡した。
 確かに、「最も悲惨で、最も間違った」としか言う他ない状況である。

 ライトノベルといっても、いわゆるラノベっぽい要素はほとんどない。24人の死者の思いが一人の少女の中で生き続けているという設定が、唯一のファンタジー要素だが、このような設定は一般文芸でも見受けられるため、ラノベっぽさを出すほどでもない。
 24人の死者たちの最後の望みを、事故で生き残った少女と少年が叶えていくのだが、その過程で生前の死者たちがどのように生きていたかが丁寧に描かれる。喪失感に打ちひしがれる周囲の親しかった人たちは、死者の最後の望みが叶うことによって、その喪失感と向き合えるようになり、再び生きる活力を取り戻す。
 こんな重い設定であるから、もちろん「面白い」という話ではまったくないのだが、非常に心に染みる小説なのだ。これがラノベではない一般文芸の装丁で「泣ける小説」として売り出されていたら、また違った受容のされ方をされたのではないかと思わせる。
 読んだ時、特に印象が強かったのは文体だ。クセがなく、あっさりと読めるのが好印象であった。自分の中では、元リーフの高橋龍也氏のノベルゲームを遊んだ時の感触に似ていた。クセがなく、簡潔な描写がソリッドさを出しているが、かといって冷たさを感じる訳でもない、そんな感じの文体であった。

 滝川廉治氏は最近最新作として、『MONUMENT あるいは自分自身の怪物』という作品も出た、。こちらは魔法のあるけど、現実と変わりない世界を描くというもので、こちらも面白そうなので、とりあえず購入した。

 こちらはデビュー作。滝川廉治氏は4作しか出していない寡作の作家なのである。


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1997年から運営している個人サイト。2002年にブログ化。オタクネタを中心で書いていたが、最近はウェブサービスの話題が多い。
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