同人誌の世界で、無料配布の同人誌は手に取られにくい : ARTIFACT ―人工事実―
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日本で音楽活動中のとあるアメリカ人の主張がなかなか興味深い - NAVER まとめ[↑B]
 こういう、どうせみんな作品を買わないんだから、無料で配ったほうがいいんだよ!話というのはよく見かける。
 それでは、有料で配っている同人誌の世界で、無料同人誌があったら、すごく注目されるのかと言うと、逆である。無料で配布している同人誌がまず手に取られず、ほとんど見向きもされないというのは、同人誌をやっている人ならよく知っていることだろう。
 この理由って実は考察をあまり見たことはないんだけど、自分が考えている理由としては、無料配布というのは、このサークル参加者(作者)は自分の作品に対して金銭に代表される、いろいろな意味で価値があると考えていないと、一般参加者が感じてしまい、もらう価値さえもないと判断しているからではないかと思っている。また、無料の同人誌をもらっても、何となくお得でもらったというだけで、積極的に自分で選んだ訳ではないから、すぐに読んだりせず、放置してしまう。宣伝のチラシと同じ扱いなのだ。

 「頒布」といわれる同人誌でお金をもらう行為は、無料で公開できるネットを使えばいいのにお金をもらうなんて、などとよく批判されるのを見かけるが、これは作者が同人誌によってお金が欲しいからという解釈しかしてないところから出る意見だろう。しかし、大半の同人誌サークルは、イベントの参加費用や同人誌の印刷費などの必要コストを引いたら儲かっているとはとてもいえないレベルなのだから、単にお金を儲けたいだけなら非常に効率が悪い。
 同人誌において金銭のやりとりがあるのは、サークル参加者からすれば「私はこの作品に対して自信があるので、あなたからお金をもらう価値があると考えている」であるし一般参加者からすれば「私はあなたの作品をお金を払っても良いと考えているほど価値があると思っている」という表明でもある。

 たまにネットで知名度がある人が同人誌を出したりしても、その同人誌がまったく売れないことがある(もちろん売れることもある)。こうした非対称性は、その人の表現に対して、無料なら見てもいいという層の人数と、お金を払ってまで見たい層の人数に極端に差があると考えられる。
ウェブの皮肉屋に、金銭や労力といったコストをかけてくれる人はいない - ARTIFACT@ハテナ系[↑B]
 昔、こういう記事を書いたが「金銭や労力といったコストをかけてくれる人」というのは、このような「お金を払ってまで、その表現を見たい人」という意味で書いた。

 音楽だって、インディーズの音源を無料配布しているWebサービスはいろいろあるが、そこで音楽を聞こうとする人はほとんどいない。インディーズミュージシャンの発掘を目的としたmF247が登場した時も、期待する声が大きかったが、結果はご存じの通りだ。無料というのは手軽に聞けるけど、同時に選択肢が多過ぎて、結局観賞しようとする人がなかなか出ない。
 音楽に限らず、作品を鑑賞しようと思うまでには、何らかの文脈が必要であり、インディーズの音楽においては、その文脈作りがなかなか上手くいかないのだろう。
 「自主制作のCD」という形態では同じなのに、「インディーズレーベルのCD」より「同人CD」の方が、多くの人の注目を集めているという違いは、この文脈の違いにあるといえる。

 無料だから見られないという主張をしたい訳ではない。無料だからといって、すべて上手くいく訳ではないという話なのだ。
 これがブログとか、そもそもが無料だった場所だったら、話は別だし、同人誌も同人のイラストや小説サイトはそれはそれで流行っているし、フリーゲームも流行っているといえる。
 しかし、最初の無料配布の同人誌の例であるように、もともと有料で配布されるのが一般的なもの、たとえば絵や音楽などの各種表現をまとめたパッケージにおいて、無料というのは良い手とは限らないのではないか。
 もちろん、菊地成孔氏が言うところの「ゼロ円ファン」みたいなファンが欲しいのなら、無料で作品を公開するのもいいだろうとは思うが、ネットのように観賞のハードルが低い場所を使うのならともかく、本やCDのような「物」を無料で配布するというのはコストの割に報われないだろう。
 以前インディーズミュージシャンらしき人が配っているCDをもらったことがあるが、結局聞くことはなかった。その代わり、ミュージシャンの名前で検索をして、YouTubeにあったライブ動画を見たのであった。
無料のネットで見られる活動だけのファン「ゼロ円ファン」by菊地成孔氏 - ARTIFACT@ハテナ系[↑B]

 最初から無料で公開したものに価値を感じなくても、有料だったものが安くなったり、無料になったりするのは価値を感じる、しかし無料だったものに値段がつくとえらく反感を買うとある人が言っていた。無料という飛び道具は、コンテンツの流通において、いつでも閲覧者を増やしたりできる訳でもなく、すべての問題を解決できる万能の兵器ではないのだ。


これまでのコメント

  1. 同人誌とかそういうレベルの作品って、購入する人も同様に「作り手」だったりする。
    お金を出すことで、「自分もこの作品作りに参加してる」という錯覚を得てる。
    いわばそういう消費行為は、「ボランティア的な投資」に近いもんだと思うので、
    『無料』にするということは、自ら応援してもらう機会を損なってるようなもの。
    地下アイドルとかも同じで、そういうマイナージャンルの何が消費者として魅力かといえば、
    「俺達がコイツを育ててやってる感」を得られることなんだと思います。
    だから同人誌の場合も、その作品の中身というより、
    人柄といった『作者の中身』が重要視されてるのかも。

    「無料公開」で通用するのは、それこそ作品のクオリティーだけで食べてるような一部のプロだけだと思います。少し最近伸び悩んでいるから、ちょっと読者やリスナーの裾野を広げてみようかな的な。最近だと佐藤秀峰や原泰久とかそのあたり。

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1997年から運営している個人サイト。2002年にブログ化。オタクネタを中心で書いていたが、最近はウェブサービスの話題が多い。
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